2019/04/20
空手の演武「型」 躍動感あふれる突き・蹴りで美しさを極める!
琉球王国発祥の「空手」は、2020年東京オリンピックの正式種目の一つです。ところで、空手には、二人が対戦形式で打撃や蹴り技を繰り出す「組み手」と、演武の美しさ・躍動感を競う「型」の2種目があります。
琉球で生まれ、日本で独自の進化を遂げた空手道。流派も松濤館流や剛柔流、極真空手や糸東流と数多く、団体名も様々です。特に、もともと組み手はプロテクターを付けてフルコンタクトで戦う方法や、顔面以外は素手で殴り合う対戦方法など、流派毎にルールも試合の進め方もかなり異なります。(オリンピックはもちろん共通ルールで実施されます)
しかし、その反面「型」は、ほぼどの流派においてもルールは共通であり、演武に込められた選手の気迫や技の美しさ、そして流麗な動きを競います。
この記事では空手の型の美しさや技の完成度、そして代表的な型の演目についてご紹介します。
空手における「組み手」と「型」
空手の試合には、組み手と型の2種目があります。組み手と型には、もともと違ったねらいと、共通して目指すものとがあります。まずその違いは以下の通りです。
組み手
対戦相手と実戦形式で「突き」や「蹴り」を繰り出し、全力で戦い、相手を倒すことが目的。例えば、松濤館流空手の公式「組み手」試合では「顔面攻撃」は一応反則技です。しかし、素手で行われる「昇段審査」の組み手では、顔面攻撃を含めた全ての打撃が認められています。
プロテクター無しで数試合戦わなければならず、審査の試合後にはどの選手も流血必至。前歯が折れてしまう選手などザラです。
型
姿勢はもちろん、「突き」「蹴り」、「気合い」や流麗な動き、その全てを演武の中で表現します。対戦形式で行う組み手とは異なり、あくまでも仮想した相手に対する攻撃や守りを、限られた数分間で表現します。
瞬間に繰り出す強力な突き技や蹴り技。道着の「パシッ」「ピシッ」という軽やかな響きと、突きや裏拳に込められた甲高い気合いがフロアーに響き渡り、観客もその迫真の演武に引き込まれます。
ただ、組み手も型も見た目こそ異なりますが、常に相手が眼前にいる戦いには変わりありません。鬼気迫る戦いの気迫が、そこには求められています。その気迫については次の章でご説明します。
型に込められた心「気迫」とは
完成された美しい型の演武には、共通する「何か」があります。その「何か」とは簡単に言うと「気迫」です。言い換えれば、演武者の「心のあり方」そのものと言っても良いかもしれません。
流麗な動きを見せる美しい演武「型」には、演技する選手の、空手家としての心の有り様がダイレクトに表現されています。前蹴りや下段払い、繰り出す「手刀」や「裏拳」のひとつひとつに、演武者の気迫が込められており、それ故に見る者を感動させるのです。
演武直前、観衆の中で開始線の上で独り静かに佇み、呼吸を整える選手の心は、「空」そのものです。一瞬瞳をかっと開き、見えない相手との真剣勝負が始まります。己の全神経をその虚空の相手に集中させ、あらゆる技を実に的確に繰り出して戦い抜かなければなりません。この気迫こそが、型に必要な絶対の条件です。
演武「型」上達のポイントとは
見る者を感動させる演武「型」。空手の演武「型」に求められる美しさと躍動感とは、次の様なものだと考えています。
技の「美しさ」
技の美しさとは「切れ」と「緩急」です。どれほど激しい動きを見せても、しなやかで柔らかな動きが欠かせません。突き出す正拳は寸分も乱れず、狙い定めた場所のみを正確に打撃し、高く蹴り上げた足刀には、瞬間空間で静止する筋力が求められます。
目にも留まらぬ素早い動きと、一撃で相手を打ちのめす強力な突きや蹴りを、緩急付けて繰り出すことが美しさの秘訣です。
力強さ「躍動感」
技の切れや美しさと共に、力強さが大切です。突き出す正拳や蹴り技の速度と打撃力はもちろん、払い技や受け技、その全てに迫力がなければ観客は感動しません。具体的には、一撃必殺の拳や蹴りを繰り出すこと、そして会場全体に響き渡る選手の力強い「気合い」が絶対の条件。
そのためには、いかなる時にも姿勢と呼吸を乱すことなく、最後まで観客を引きつける迫真の演武を披露することが必要です。
型の上達ポイント
美しい型を習得するには、一朝一夕では不可能です。「突き」や「蹴り」ひとつとっても、一撃で敵を打ち負かす強力な打撃力は身に付きません。ひたすら日々修練に取り組み、「巻き藁」を使って、正確な拳の出し方、前蹴りや横蹴り、回し蹴り、膝や肘技を体に刻み込むより方法は無いのです。
その際のポイントは、常に正面や背後に仮想敵を設けて鍛錬に励むこと。ただ闇雲に拳を突き出しても、全く上達などしません。目線を逸らさず、常に自分に立ち向かってくる相手を思い浮かべ、重心を拳の先に集中しながら、一撃で打破できる正拳や裏拳、回し蹴りを繰り出すことを心がけましょう。
美しさを極める型「観空大」
「慈恩」(じおん)や「抜塞」(ばっさい)など空手ファンなら一度は耳にしたことのある美しい型の中に、「観空大」(かんくうだい)があります。もともと琉球空手では「クーシャンクー」と呼ばれていた演武のひとつで「観空大」と「観空小」の二つがあります。
いずれも空手高段者の会得する高度な型の一つですが、「もののあり方「空」を観る」からこの型の名前である「観空」は名付けられています。
演武冒頭、空を見上げて、両手をゆっくり掲げながら大きな円を描きます。突如左右の相手を手刀でなぎ倒し、すかさず正面の相手に対して正拳を左右から繰り出します。同時に相手の突きを両手で払いのけ、それと同時に、再び両側の敵を左右の足刀で蹴り倒すことから観空大の演武は始まるのです。
ラストは、空中から眼下にいる敵めがけて裏拳を振り下ろし、演武が終わります。激しく立ち振る舞っても、息一つ乱してはいけません。開始線のちょうど真上に戻り、静かに両手を合わせて一礼するまでが観空大の見せ場です。
数ある空手の型の中でも、特に人気の高い「観空大」。あなたもぜひ一度その迫力満点の美しい演武を見てください。
まとめ
まもなく始まる東京五輪で、再び空手は改めて檜舞台に躍り出ようとしています。空手ファンで無くても、ぜひ一度、その真骨頂「型」の、躍動感溢れる美しさを間近で観覧してみて下さい。きっとあなたも心に深くその感動を刻み込むことでしょう。
オリンピックの空手を見て感動や興奮を覚えたのちには、ぜひ大阪市にある空手道場誠空会にお越しください。空手は見ることも楽しいですが、やってみることにも大きな感動があります。当道場では、競技として強さを極めたいという人もストレス解消や健康作りを目的としている人も幅広く入会しています。
それぞれのペースや目的に合った空手の学び方ができますので、一緒に日本伝統の空手を盛り上げていきましょう。